海外駐在員の配偶者を対象としたアンケート結果を公開【2025年実施】
一般社団法人駐在ファミリーサポート協会は、駐在員に同行する配偶者(駐在ファミリーカフェ運営メンバー)を対象に、「駐在生活の実態とニーズ」に関するアンケート調査を実施いたしました。
2025年度を起点として、駐在員家庭の課題やニーズを継続的に定点観測してまいります。
調査の結果、駐在員の8割以上が管理・監督職等の責任ある立場である一方で、その家庭を支える配偶者の6割以上がキャリアの中断を経験している実態が明らかになりました。
また、異文化環境下における孤立感や育児負担の増大など、生活面・精神面での課題が生じていることも確認されています。
企業による支援は金銭面・物質面に重点が置かれる傾向がある一方、配偶者はキャリア形成や精神的ケアに関する支援を求めていました。しかし、企業が提供している支援内容と、配偶者が実際に求めている支援との間には乖離が見られました。
本リリースでは、駐在員家庭を一つの「チーム」と捉え、駐在員の成果を個人の能力だけでなく家庭環境を含めたチーム全体のパフォーマンスとして位置づけます。そして、その背景にある配偶者が直面する、キャリアの断絶や生活・心理的負担といった課題が、駐在員本人のパフォーマンスや企業の海外人材戦略と切り離せない関係にあることを提起します。
調査結果のハイライト
1.【駐在員の実態】
調査対象世帯の駐在員の8割以上が管理職をはじめとする責任ある役職。業務遂行とマネジメントを兼務する多忙な状況が常態化しており、家庭運営は配偶者に依存しており、負担が大きい。
2.【配偶者のキャリア背景】
同行前は約57%が正社員として就業。金融、製造、公務などで安定したキャリアを有する人材が多く、駐在への同行を契機に労働市場から一時的に離れている状況。
3.【家事・育児負担の集中】
家事・育児に関する外部サポートを利用していない家庭が約7割。役割分担が固定化し、配偶者が孤立しやすい環境に置かれるケースが見られる傾向。
4.【企業支援とのギャップ】
引越し支援や各種手当などの金銭面・物質面の支援は一定程度整備。一方で、キャリア支援やメンタルケアなどソフト面の支援は利用実績がなく、今後の支援に期待する声が多数。
調査概要
- 調査期間
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2025年8月4日~2025年9月30日
- 調査対象
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駐在ファミリーカフェ運営メンバー※
- 回答数
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54名(駐在ファミリーカフェ運営メンバーの96.4%が回答)
- 回答者の滞在地域
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アジア: 43.3%、北米: 31.7%、ヨーロッパ: 13.3%、中近東: 5.0%
中南米: 3.3%、アフリカ: 3.3% - 調査目的
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駐在員に同行する配偶者の実態と支援ニーズを明らかにし、駐在員家庭を一つの「チーム」と捉えた企業支援の重要性の提言につなげること
- 発表者
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一般社団法人駐在ファミリーサポート協会
※「駐在ファミリーカフェ運営メンバー」とは、駐在同行や海外生活の経験を持ち、その体験を活かして情報発信や交流の場づくりに協力しているボランティアメンバーです。一般社団法人駐在ファミリーサポート協会とともに、駐在ファミリーカフェの運営を支えています。
本調査の回答者は全員、駐在員の妻(女性)です。
調査結果詳細
1. 駐在員の多くは企業の中核を担う、子育て世代。家庭の安定がパフォーマンスに直結
調査対象世帯の駐在員の約8割が35歳〜49歳に該当し、子育て世代が中心となっています。業種としてはメーカーや金融分野を中心に、管理職として勤務しているケースが過半数を占めています。
過去に実施した調査からも、多くの駐在員は、言語・文化の異なる現地社員のマネジメントや日本本社との調整に悩みつつ実務も担っており、加えて、休日・深夜帯の稼働や出張者対応などで公私の区切りも曖昧になりやすく、長時間労働が常態化しています。
(参考)2024年4月11日 駐在ファミリーカフェ
【プレスリリース】海外駐在員調査を公開|配偶者のキャリアや家族の適応サポートが赴任受け入れおよび家族帯同の検討課題に


2. 「キャリアの中断」と「育児負担の集中」、社会参加へのニーズ
7割以上が駐在同行に伴い退職、約6割が「安定したキャリア」を中断


本調査の回答者である駐在員配偶者の同行前の経歴を見ると、育児休業中を含め、何らかの就業状態にあった人は約86%でした。さらに、約57%が正社員(フルタイム・時短勤務)として就業しており、そのうち半数以上がフルタイム勤務でした。
また、金融・保険、医療・福祉、公務、教育など、日本の国家資格や国内制度に依拠する職種の職に就いていた回答者は4割強を占めました。結果として、一定の専門性や経験を有する人材が、現地で就業していない状況が確認されました。
ボランティア活動が社会参加の受け皿に
本調査では、企業によるキャリア支援制度の利用者はおらず、メンタルヘルスケアの利用についても回答者はごく少数にとどまりました。そのような中で、本調査の回答者である運営メンバーは「社会とのつながりを持ちたい」「自身のスキルや経験を活かしたい」という思いから、当団体のボランティア活動に参加しています。これらの活動は、配偶者に対する制度的な支援が十分でない環境下において、社会参加の機会を補完する役割を果たしている状況です。
生活基盤の整備は充足しつつあるが、駐在員の生活を支える配偶者への支援は今後の課題
引越し費用や医療保険など、生活基盤を支えるいわゆるハード面の支援については、比較的高い満足度が示されました。一方で、「配偶者のキャリア支援」に関する制度の利用者は確認されず、メンタルヘルスケアについても利用実績は限定的でした。

3. 駐在員家庭は一つの「チーム」― 求められる後方支援へのサポート
駐在員が安定的に業務へ集中するためには、配偶者が担う駐在員や家族の生活・育児・健康管理といった後方支援が円滑に機能していることが重要です。本調査では、配偶者が海外での駐在生活の中で、駐在員本人以外からの親族のサポートも得られない中で家事・育児を一人で担い、社会的な支援を得にくい状況に置かれており、心理的負担が蓄積し、家庭全体の安定に影響を及ぼす可能性があることが示唆されました。こうした状況は、結果として駐在員本人の業務パフォーマンスに直結します。
企業人事・経営層への提言:「三方よし」の実現に向けて
本調査では、駐在員の配偶者がキャリアの中断や社会との接点の持ちにくさといった課題を抱えている状況が示唆されました。
海外駐在での成果は、駐在員個人の能力のみならず、駐在員の配偶者による家庭環境の安心・安定、健康管理といった日々の協力・貢献があることも忘れられてはなりません。配偶者の心身の健康や、キャリア中断に伴う不安への配慮、社会参加の機会の確保は、福利厚生の一施策ではなく、駐在員の定着や活躍を支える人材マネジメント上の重要な視点といえます。
配偶者を含めた駐在員家庭を一つの「チーム」として捉え、キャリアや社会参加を巡る課題に向き合うことは、駐在員が安心して業務に専念できる環境を確保するうえで重要な経営課題の一つといえます。
そのため企業には、福利厚生や人事規程の見直し、関連制度の整備・改定など、実効性のある施策を具体的に検討・実行していくことが求められます。
こうした取り組みは、企業・従業員・家族のすべてに価値をもたらす「三方よし」の実現につながると期待されます。
補足資料:
本アンケートの全調査項目は以下の通りです(太字箇所は調査結果の概要にて記載)。
- 回答者の年代
- 駐在国・都市
- 家族構成
- 子どもの年齢
- 駐在ファミリーカフェでの活動継続年数
- 駐在ファミリーカフェの活動に参加した理由
- 駐在ファミリーカフェで活動してどう感じたか
- 渡航前の直近の就業形態
- 就業していた業界
- 従事していた職種
- 駐在同行にともなう就業状況の変化
- キャリア意識の変化
- 駐在員本人の年代
- 駐在員本人の勤務先の業界
- 駐在員本人の会社での役職
- お手伝いさん(家事・育児サポート)の利用有無
- 一時帰国の頻度
- 出張者や一時帰国者が「持ってきてくれたらうれしい」品目
- 利用している/したことがある福利厚生サービス
- 海外赴任制度に対する意見・改善要望
【本件に関するお問い合わせ先】
※ 全ての調査結果の提供も可能です。本リリース問い合わせ先(company@czsupport.or.jp)までご連絡をお願いします。
※ 本調査結果は「一般社団法人駐在ファミリーサポート協会調べ」と表記の上、ご利用ください。
